いじめ事案における「重大事態」
いじめ防止対策推進法第28条によれば「重大事態」とは、
① いじめにより学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがある場合
② いじめにより学校に在籍する児童等が相当期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある場合
の2通りをいいます。また、文科省が定めた「いじめの防止等のための基本的な方針」によれば、②の「相当期間」は、年間30日が目安とされています。
「重大事態」にあたる場合、たとえば公立学校であれば、直ちに学校の設置者(教育委員会)への報告及び地方公共団体の長等への報告を行う義務があります。その上で、学校の設置者が調査を行う主体や調査組織をどのようにするかについて判断し、事実関係等の調査を行うことになります。
いじめ防止対策推進法は、事態の早期発見、被害の未然防止と拡大防止を図るための法律ですので、①②ともに、「疑い」で足ります。したがって、①はいじめを受ける児童や生徒の状況に着目して判断されますが、児童生徒や保護者から、いじめによる重大な被害が生じたという申立てがあったときは、その時点で重大事態が発生したものとして報告・調査を実施する義務があります。また、①②ともに「いじめによ」ることが前提ですが、これについても、損害賠償請求の場面におけるほど厳密な因果関係が要求されているのではなく、学校側の対処の前提として、いじめと一定の関連性があると疑われれば足ります。
以上みてきた「重大事態」にあたるか否かを判断するのは、「学校の設置者又はその設置する学校」です。「いじめ」の認定同様、学校側が「重大事態」と認めることをためらってしまい、事後の必要な対処に結びつかない可能性は十分にあります。「重大事態」の判断においても、学校側に法の趣旨に沿う対応を促すための交渉が必要な場合も考えられますので、弁護士にご相談されることもご検討ください。