「負動産」という言葉をご存知でしょうか。一般に「負動産」とは、「売るに売れない」「維持管理するのにも費用や手間がかかる」「貸しても借り手がつかない」といった、所有しているだけで「負の財産」になってしまう不動産のことを言います。
このような土地が相続の際に問題になることが往々にしてありますが、維持管理が大変で、手放したいと考える方も多いと思います。では、この負動産をどうすればよいのでしょうか。例えば、以下の方法が考えられます。
1.遺産分割協議
不動産を所有している人が亡くなり、相続が開始されると、被相続人が所有していた不動産は相続人に移転します。そして相続人が複数人いる場合には、不動産は相続人の共有になります(民法898条第1項)。
この共有状態は、一時的・暫定的な状態ですから、それぞれの相続人への財産帰属が確定するためには、遺産分割をしなければなりません。
ここで、不動産の近くに住んでいる相続人がいる場合、当該相続人が不動産を相続してくれる可能性がありますし、預貯金や他のプラスの財産を相続することを条件に不動産を相続してくれる可能性もあります。
全ての相続人が納得した上で相続財産の帰属を確定するために、どのような方法があり得るか、弁護士が専門的な観点からアドバイスできる場合もありますし、話し合いがまとまらず、遺産分割調停という家庭裁判所の手続きを利用する場合には、弁護士が手続代理人として話し合いをすすめることもできます。
相続人間で遺産分割についての話し合いをされる際には、一度弁護士に相談されてみることをお勧めします。
2.相続を放棄する
負動産があり、他にプラスの財産がない場合など、相続財産を全体として見たときに、相続しない方が良いと考えられる場合もあります。このような場合には、相続放棄という手段が考えられます。
相続放棄は、相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります(詳しくは、「相続人に借金が判明したら」(相続放棄の手続)のページをご覧ください)。
期間制限が3ヶ月と短いため、迷った場合は、早めに弁護士にご相談ください。
3.相続土地国庫帰属制度を利用する
2023年4月27日に開始された相続土地国庫帰属制度を利用することも一つの選択肢です。この制度は、相続等によって、土地の所有権または共有持分を取得した者等が、法務大臣に対して、その土地の所有権を国庫に帰属させることについて承認を申請することができる制度ですが、一定の条件があります。
例えば、建物がある土地や境界が明らかでない土地、一定の勾配・高さの崖があって管理に過分な費用・労力がかかる土地などは、承認を受けることができません。
維持管理に費用や手間がかかる土地を相続した場合、まずは、当該制度の対象になるかどうか、お気軽にご相談ください。