職場以外でのセクハラで懲戒処分されるのか
Q: 職場の懇親会に出席し、二次会まで参加したのですが、お酒に飲まれてしまい、後日、会社から「セクハラ被害を訴えている方がいる。事実関係について聞き取り調査を行いたい」との通告を受けました。
深酔いしていたのであまり記憶もないのですが、同僚も見ていた可能性があり、絶対にないとまでは言い切れません。ただ、会社内では常に真面目に仕事をしてきました。職場外の飲み会の場での行為も、懲戒処分の対象となるのでしょうか。
A: 職場外の懇親会などの席上であっても懲戒処分の対象になりえます。
まず、セクシュアルハラスメントは、現在では社会的に大きな問題となっており、法的な表現としては、当該行為によって、相手方の性的な羞恥心を害した場合には、相手方に対する違法なセクハラとして、慰謝料の対象になると考えられます。
問題は、職場外の懇親会の場で、お酒も入った席上での行為によって、会社でも懲戒処分を受けるのか、です。
労働契約法15条は、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」権利濫用として当該懲戒は無効であると定めています。
使用者の労働者に対する懲戒権は、「企業秩序維持の観点から労働契約関係に基づく使用者の権能として認められるもの」ですから、あらかじめ就業規則等において、懲戒事由を定める必要があり、これを周知させなければなりません(労働基準法89条9号は「制裁の定め」は「種類及び程度に関する事項を就業規則に定めなければならない」旨規定しています)。
現在、多くの企業で「セクシュアルハラスメント」に関する規程を設けてありますが、通常、それらの規程では「セクシュアルハラスメント」の定義として、「職場において行われる性的な言動」と定義していることが多いため、本件では、セクシュアルハラスメントが行われた場所が会社外の懇親会の場であったため「職場における」セクハラに当たらないとも思えます。
しかし、そもそも、使用者による懲戒権が認められるのは、労働契約に基づき、企業としての秩序を維持することを目的として持つことに基づくものであることから、重要な観点は、「当該行為により、企業内の秩序維持に悪影響が出るか否か」という観点です。
そうすると、「企業内の秩序維持に悪影響が出るか」という観点から、各懲戒事由が解釈されるべきです。つまり、「会社内か、会社外か」で形式的に判断されるべきものではなく、「企業の秩序維持に悪影響がでるか」という観点で実質的に判断されるべきです。
いわゆる男女雇用機会均等法11条1項ないし3項を受けたガイドライン(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」)でも、「職場」とは、「通常就業している場所以外の場所であっても当該労働者が業務を遂行する場所」は職場に含まれるとされ、例えば、「取引先の事務所、取引先と打ち合わせをするための飲食店」であっても職場に含まれると解釈されています。
したがって、職場外の懇親会の場での同僚職員に対するセクハラにより、会社から懲戒を受ける恐れはあります。
ただ、目撃者の状況やその他の状況によって、慰謝料問題や懲戒の重さの問題など、様々な問題がありますので、どうぞご相談ください。