緊急車両との交通事故
自動車で走行中、突然、普段なら自動車が出てくることはない一方通行の道路からパトカーが飛び出して車に衝突した場合、明らかにパトカーが飛び出してきたとしても、賠償しなければならないのか。
大変不幸な事故ですが、現在の裁判例では、パトカー(警察)に対して、賠償義務が発生すると考えるべきです。
法的には、パトカーのような「緊急車両」は、「停止しなければならない場所でも停止しなくともよい」とされ(道路交通法39条2項)、「緊急車両」に対しては、他の車両は交差点に進入してはならないとされているからです(道路交通法40条)。
緊急車両と一般人の方の交通事故の裁判例では、通常の事故のように、細かに「過失割合」を検討せず、おおむね、市民側7:3緊急車両というケースがかなり多く、賠償をしなければなりません。大いに不満があることは間違いありませんが、これに対する備えは、任意保険に加入するというのが最も確実な対策になります。
ただ、「緊急車両」は交差点においても「他の交通に注意して『徐行』しなければならない」とされており(39条2項)、これこそが緊急車両の唯一の義務とされています。ここで「徐行」とは、「車両が直ちに停止できるような速度で走行すること(通常は時速10㎞程度)」をいいます。
したがって、「パトカーは10㎞程度ではなかった」ことを強調して、少しでも負担を減らす主張をすることで反論をするということになります。ただし、実際上、裁判をするとなれば弁護士費用等の「費用対効果」の問題もあるため、どの程度まで争うべきかというのが最も難しい判断です。弁護士にご相談されることをお勧めいたします。